2010/05/10

もう、迷わない

嫁との話し合いを終えた後、

会社に戻り、机に着くなり辞表を書きはじめました。


後から気付きましたが、辞表には体裁があります。
一身上の都合により退職いたしますの文面だけあれば
後は余計な文章は不要なんですよね。

私は、そういう事も知らずに
ただ、現状の心情を書き綴り、三役に辞めさせて下さいという内容で
ワードで文章を作り、即行でメールにて送信しました。

メールで送信するという事も、普通では無いことでしょう。
それくらい思いは先へと進んでしまっていました。

ひと通り書きあげて、普通ならば動揺するのかもしれませんが
妙に落ち着いた気分になりました。

もう、辞めるんだなあと思うと
不思議な感覚が湧いてくるのを感じました。
もう会社に属していないような錯覚です。


それから1時間もせずに常務から電話がかかってきました。

常務
「今から行くから!」


「!!!」


常務はとても忙しい身です。
日々全国を行脚されていて、その日も東京へ戻られる途中だったようですが
そのまま、群馬まで行くからという内容で電話は切れました。


夜も7時30を過ぎたころ、ホテルの中華料理屋に
常務と私は座っていました。


常務
「何で辞めるん?」

いつもと変わらないながらも、心配そうな口調です。


「実はずっと思っていて、いろいろと考えた末の結果です。」


常務は、私が将来社長になられる器だと感じているほどの方です。
人情味があふれながら、人脈を生かし、切れる考え方で
今までいろいろな功績を残してこられています。

この時に話して下さった内容は、
自宅が自営業で大変な苦労をし、自営ではやめようと思われたこと、
これからの会社に、私が必要な存在であること、
どうしてもだめなら、今の会社の代理店をやったらどうかという提案、
などでした。

大変、ありがたい話ではありましたが
どんな素晴らしい説得であっても、一度決めた心を動かされるくらいなら
辞めるなどとは言ってはいけないと思っています。



男に二言はない。


一度決めたら、やるしかない。



常務も最後には分かって頂けたようでした。


駅にお送りするときに


常務
「悲しいなあ・・・。」

と言って、うっすら涙を浮かべながら改札を通られる後ろ姿に
思わず涙が伝って流れていました。


人通りが多い中でしたが、流れる涙が止まらずに
しばらく、後ろ姿を見ながら見えなくなった後も立ちつくしていました。