社長との面談は、本社での会議中に行われました。
社長抜きでの全体会議だったのですが、私は途中で呼ばれて
社長室で1対1の面談となりました。
社長
「どうしたの?」
私
「すみません。」
社長
「説明してくれんと、解らんじゃない。」
私
「はい。・・・・・」
社長には既にいろんな人からの情報が入っているのですが、
決して自ら話をしようとはされませんでした。
人から聞いた話と、直接聞いた話との違い、
その事を良く理解されているからだと思います。
私は、今の仕事は好きである一方で、役職が不向きで集中できていないこと。
家族が転勤で参っていて、特に妻の調子が良くないこと、
妻の実家に戻りたいこと、サラリーマンを辞めたいこと。
これらを感極まって言葉足らずな表現ながらも、すべて正直に話しました。
社長は一度だけ、社長のお願いという事で地元の支店で働けばいいじゃないか
という意見も下さいましたが、収入の面で難しいことを伝えました。
務めていた会社の収入が少ないと思ったことはありませんでした。
ただ、転勤に不満の妻からは、収入が足りていないという事を
常々言われていた私が、コンプレックスを感じていたのです。
いろいろな考えの結果、決めた事であるという意思を伝えた後、
社長は地元に遊びに行った時は、良い話を聞かせてくれという言葉をかけて下さいました。
本意ではなかったかもしれませんが、懐の深さを感じたのを覚えています。
会社は一人の人材を育てるのに相当の費用を投資しています。
人材は資源ですから、人材流出は間違いなくマイナスです。
しかし、社長は責めるでもなく、納得して頂けました。
このときに、今まで勤めていた会社の良さを実感したのでした。
しかし、そんな会社を辞めた今も後悔の念は微塵もありません。
それは、自分にとって大切なものに気付いているからだと思います。
多くの人にとって、仕事は収入を得ることの手段だと思いますが、
収入を得る手段として今の仕事を続けることと、
家族みんなが幸せであることを考えた時に、
同時に満たされることはない、と気付けたのが良かったなあと心から思えます。